2009/08/14

朝日新聞「音楽人♪File」-5

 2ヶ月に渡って続けてきたこの連載も今回で最後、早いものだ。こんな素晴らしい機会を与えて下さった朝日新聞さんと読者の皆さんに改めて感謝の意を表したい。本当に本当にありがとうございました!



 2002年から足かけ8年、フルアルバムを6枚、ベスト盤を1枚、ライブ盤を1枚、トータル8枚ものアルバムを出してきた。決して急いでいた訳ではないがかなりのハイペースだ。その間にも沢山のレコーディング、膨大な数のライブ、国内外のツアーなど本当に素晴らしい経験をさせていただいており、本当に恵まれているなあ、とひしひしと感じる。悩むこともあるが、自分のスタンスがブレることなく歩いて行けてることは恵まれた出会いの賜物だし、本当にありがたいと思う。

 世の中は今大転換期だ。音楽業界も例外ではなく、従来のCDというメディアからダウンロード配信や動画配信など、世の中の動きを反映してより手軽に音楽を手に入れられる状況に移り変わり、僕らを取り巻く環境も激変してきている。そこには良い部分も悪い部分もあるだろうが、忘れてはいけないのは音楽は「人間」がやっているということだ。

 生身の人間が音に息を吹き込むからこそ音楽は音楽たりえ、魅力的なのだ。インターネットという「魔法の」メディアが、少しずつ音楽の活力を奪っていっている気がするのは僕だけではあるまい。 音楽が去勢されてしまわないように誠実に音と向き合い、エネルギーを吹き込むことを肝に命じて音楽を作り続けて行きたいと思う。

 「ジャンルや既成のものに縛られず音楽を作る」ということは、僕を突き動かしてきた原動力の一つで、それはこれからもずっと変わらないだろう。あとは出会い。次はどんな人と会い、僕はどう変わってゆくのだろう。人生という旅の傍らには必ず音楽と人があり、風に吹かれ、たゆたうようにナチュラルに生きて行ければいいなあ、と思う。最後にこの連載を読んでくれたあなたといつかお会いすることができますように!

<朝日新聞・2009年8月14日(金)夕刊掲載>

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